SNSの「共感文化」はどこから来たのか
SNSの初期は「好きなものを共有する場」でしたが、いまは「他人の気持ちを読み合う場」へと変化しています。
特にInstagramやTikTokでは、“わかる!”という共感を得る投稿が拡散の中心。
共感は仲間意識の証であり、承認のサインにもなりました。
しかし、その積み重ねが「共感しなければ関係が続かない」という圧力を生んでいます。
義務になった瞬間に始まる“心のバッテリー消耗”
Z世代の多くが抱えるのは、「共感を求められすぎる」ことへの疲れです。
誰かの悩みに寄り添い、誰かの嬉しさを称える──
それ自体は優しさですが、他人の感情を毎日受け止め続けるのは心の負担になります。
「反応しなかったら冷たいと思われる」「既読のままは気まずい」。
そんな小さな気づかいの積み重ねが、心のバッテリーを消耗させているのです。
TikTokでは #共感疲れ のタグで「SNSから距離を取る勇気」を共有する動画が増えています。
共感し続ける自分を一度リセットするという行動は、自己防衛として自然な流れなのかもしれません。

「いいね」より“距離感”を整える新しい関係
最近のSNSでは、「共感」より「距離感」を重視する動きが目立っています。
Instagramの「親しい友達限定ストーリー」や「ノート」など、共有範囲を選べる仕組みが人気を集めています。
誰にでも見せるのではなく、一部の人だけに見せる。
その小さな閉じた関係性こそ、Z世代にとっての安心のかたちです。
SNSを“無理しない場所”に変えるには、距離を取る技術が必要です。
反応しない優しさ、関わらない自由──
それがいま、新しい思いやりの形として受け入れられています。

SNSをやめない理由 それでも続けるのはなぜか
SNSには疲れがある一方で、リアルでは得られない価値も存在します。
情報の早さ、同じ趣味を持つ人との出会い、誰かに見守られている安心感。
だからこそZ世代は、離れるのではなく、使い方を選び取る方向に進んでいます。
見る相手・関わる範囲・反応の頻度──
それを自分で決めることが、SNSとの健全な距離を生む。
SNSは「つながりの場」から、「自分を映す鏡」へと役割を変えつつあります。

共感しすぎない優しさが、これからの標準になる
共感をやめるのではなく、自分をすり減らさない共感に変えること。
誰かの感情を抱え込みすぎず、見守る距離を保つことが、今のZ世代に必要なバランスです。
「共感できない自分」も否定せず、沈黙を許せる関係を選ぶ。
それがSNSとの優しいつながり方の第一歩になります。
ライター:ユナ・ハセガワ
Z世代のSNS心理とデジタル文化を研究するライター。「共感」と「孤独」のあいだにあるリアルをテーマに執筆し、SNSの使い方を優しく見つめ直す記事を発信。


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