完璧じゃないほうが、刺さる
企業アカウントが一斉に“完璧なブランディング”を競った時代がありました。
色調統一、計算された構図、ミスのないテキスト。
けれど、Z世代はその整いすぎた空気に「温度がない」と感じているようです。
最近、SNS上で注目を集めているのは、“あえて”統一感を崩した投稿。
社員がカメラに笑って映り込み、手書きのホワイトボードが少し曲がっている。
そんな“ちょっとダサい”の中に誠実さがある。
企業が人間らしさを取り戻すほど、コメント欄は温かくなっていきます。
「映え」より「素の誠実さ」
「かっこよすぎるブランド投稿より、素で笑ってる社員の方が信用できる」Z世代のコメント欄でよく見かける言葉です。
そこにあるのは、「映える=信頼できる」という旧来の図式の崩壊。
Z世代は、光が飛んだ写真や完璧なレイアウトよりも、リアルな“その場の空気”を感じ取る力に長けています。
だから企業が間違えても、それを隠さず投稿すれば、「人が運営してる感がして好き」と言われる。
ミスを共有できる誠実さが、いま最も価値あるマーケティング資産なのです。

「ゆる企業投稿」は戦略的誠実
“ゆるい投稿”が成功している企業には、ある共通点があります。
それは「意図的に力を抜く構成」です。
完璧な画像や文体をあえて避け、少しのミスやゆらぎを含める。
この“ズレ”がZ世代にとって、「人間が書いた」という証明になります。
マーケティング的に言えば、これは「脱・演出の演出」。
無防備さを装うのではなく、誠実に曖昧さを残すこと。
Z世代はそのリアリティを、“本音が出ている投稿”として信頼するのです。
コメント欄が「距離」を育てる場所に
ゆるい投稿ほど、コメント欄は“近い空気”になります。
完璧なビジュアルには「コメントする余地」がない。
でも、少し隙があると、見る人は“自分の出番”を感じるのです。
「うちの会社もこんなミスあります」
「これ、リアルで好き」
そんな声が積み重なって、企業とユーザーのあいだに双方向の関係性が生まれます。
それはエンゲージメントではなく、共感の温度。
Z世代が離れないアカウントとは、この“共感温度”を共有できているブランドです。

企業の「素顔」を出す技術
ただし、“ゆるい投稿”は「手抜き」とは違います。
どこまで見せ、どこで締めるか。
緩急の設計が必要です。
ポイントは3つ。
1つ目は「意図的に編集を止める」。
文章を完璧に整えず、言葉の勢いを残す。
2つ目は「映えない写真を使う勇気」。
ぼやけた笑顔のほうが、Z世代にはリアルに見える。
そして3つ目は「ミスを笑える空気感」。
失敗を“ネタ”として扱える組織文化が、ゆるさを支えます。
ゆるさの裏に、編集の設計がある。
それを意識するかどうかで、ただの雑な投稿と“ブランドの誠実さ”は分かれます。
「失敗の共有」が新しい信頼をつくる
企業が“完璧”でなくても信頼される時代。
それはZ世代がSNSで、日常の失敗を共有する文化を持っているからです。
“成功より失敗がリアル”。
その感覚を、企業もようやく理解し始めた。
Z世代が共感するのは「完成された広告」ではなく、“一緒に成長しているブランド”。
失敗を通して親近感が芽生える。
だから“ゆる企業投稿”は、誠実の最前線なのです。

結論:ゆるさは戦略、誠実は技術
“ゆるさ”は、適当ではなく戦略。
“誠実さ”は、才能ではなく技術。
Z世代は、それを見抜く目を持っています。
投稿の完璧さではなく、人間らしさの温度差で評価される時代。
「企業っぽくない企業」が好かれるのは、そこに余白があるからです。
そして、この余白こそが、Z世代が最も信頼する新しいブランドの形です。
ライター:アヤノ・モカ
SNSトレンド分析を専門に執筆。
「人の温度が伝わるマーケティング」をテーマに、ブランドの“声”を可視化する文章を得意とする。


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