「通知オフ」が当たり前の時代へ
LINEやInstagramの通知音が鳴った瞬間、反射的にスマホを手に取って既読にする。
そんな“秒で既読”がスタンダードだったのは、少し前の話です。
いま、Z世代のあいだでは**「通知を切る」という選択**がごく普通になっています。
SNSの反応速度が誠意のバロメーターだった時代は、静かに終わりを迎えつつあるのかもしれません。
通知が鳴るたびに「見なきゃ」と感じてしまうあの圧。
それに違和感を覚え、距離を取りはじめたのがZ世代です。
彼らは、自分のペースと心の余白を守るために、“通知から離れる”という文化を自然と育てています。
通知を切ることで守れるもの

「通知、全部オフにしてます」
そう話す高校3年のユウカさん(仮名)は、部活と受験に追われる日々を送っています。
彼女にとって通知は“情報”ではなく、“圧”。
「既読つけたのに返事ないの?って言われるのがすごく嫌で。通知を切ってたら“気づかなかった”って言えるからラクなんです」
ただの言い訳ではありません。
“気づかないふり”は、人との距離をうまく調整する手段なのです。
Z世代は、自分のリズムを優先しながらつながる方法を身につけています。
即レス=いい人?はもう古い
以前は、すぐ返信できる人が「誠実な人」とされていました。
でも今は、“即レス=常にスマホを見ている人”というイメージに疲れている若者も少なくありません。
「秒で既読だと、“ヒマそう”って思われるのもなんかイヤなんですよね」
そう話すのは、大学生のミツキさん。
彼は通知を切ることで、“ちょうどいいテンポ”を自分で作っています。
Z世代のなかでは、「早く返すこと」よりも**“間を大切にする”感覚**が広がっているのかもしれません。
すぐに返さなくても崩れない関係のほうが、安心できる──そんな空気があります。
通知疲れと“気づかないふり”の技術

SNSの通知は、便利なツールというより「プレッシャー」に近い存在になっています。
メッセージが届くたび、誰かに何かを求められているような気分になってしまう。
その積み重ねが、知らず知らずのうちに“通知疲れ”を引き起こしているのです。
そうした中で、Z世代は独自の工夫を身につけています。
通知バッジを消す、アプリ内通知を制限する、あえて反応しない──それらはすべて、過剰な関与を避けるための技術です。
急かされない環境を、自分でつくる。
“気づかないふり”は、そうした自衛のための戦略として定着しています。
実際の“気づかないふり”ってどうしてる?
- 通知バッジは全部オフに設定
- LINEやInstagramのプッシュ通知も切る
- DMやグルチャは「見てないふり」で後回し
こうした工夫が、「返さなきゃいけない」から解放される空間を生み出しています。
Z世代は、反応の速さではなく、**“気配のコントロール”**でつながり方を整えているのです。

早く返す=仲がいい?じゃない
Z世代はもう知っています。
リアクションの早さが、関係の深さを決めるものではないということを。
「すぐ返す=いい関係」ではなく、
“無理のない距離感でつながれるほうが心地いい”という考え方が、少しずつ当たり前になってきています。
かつてのSNSマナーとは違うかもしれません。
でもそれは、“反応しない自由”がようやく許されはじめた時代の姿でもあります。
SNSに疲れても、つながりを捨てたいわけじゃない。
だからこそ、まっすぐ向き合うのではなく、少しだけ“目線をそらす”ことで関係を守ろうとしているのです。
通知オフは、逃げではありません。
それは、自分を守りながら誰かとつながろうとする、優しさの表れなのかもしれません。
ライター:ユナ・ハセガワ
SNSの“空気”に敏感な観察系ライター。Z世代の間で生まれる無言のルールや、気づかれない感情のやりとりに関心を持ち、LINE・Instagram・X(旧Twitter)などの実例をもとに、デジタルコミュニケーションの変化を言葉にして届けている。「かわいくないけど気になる投稿」「フォローしないけど見てる関係」など、曖昧なつながりの描写に定評あり。