“しゃべらない投稿者”が信頼される理由。Z世代が選ぶ“静かな推し”

“しゃべらない投稿者”が信頼される理由。Z世代が選ぶ“静かな推し”
“しゃべらない投稿者”が信頼される理由。Z世代が選ぶ“静かな推し”
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無言なのに、なぜか心が動く

「この人、何も話してないのに、ずっと見てしまう」
Z世代のSNSでは、そんな“しゃべらない投稿者”が確実に増えています。

表情だけで伝える、黙って作業する、BGMもナレーションもない。
そんな静かな投稿が、実はじわじわと人気を集めているのです。

いったいなぜ、声も言葉もないのに、人は“推したくなる”のでしょうか?
そこには、Z世代ならではの共感のしかたと、**ちょうどいい“距離感”**が関係しているようです。

しゃべらないからこそ、見えてくるものがある

しゃべらない投稿には、余白があります。
言葉で説明されないからこそ、視聴者はその分を“感じ取ろう”とする。

たとえば、無言で作業を進める動画。
ただ静かにメイクをしているだけのリール。
背景には音も言葉もないけれど、投稿者の空気や感情が伝わってくる。

Z世代の多くは、そうした投稿を「落ち着く」「見てて安心する」と感じています。
強く押し出されるよりも、そっと寄り添ってくれるような静けさに、共感と信頼を覚えるのです。

SNSで求められる「うるさくない人」

スマホを開けば、派手なBGM、大きな声、テンション高めの実況…。
にぎやかな動画があふれる中で、“音がないこと”が逆に新鮮に映るようになりました。

学校や通学中、音を出せない状況でも見やすい無音投稿。
そしてなにより、「無理に自分をアピールしてこない安心感」が、静かな投稿者にはあります。

フォロワーは、「この人、こっちのペースを尊重してくれる」と感じる。
それはまさに、“疲れない投稿者”として選ばれる理由なのです。

発信者と受け手の“ちょうどいい距離”

言葉がない投稿は、距離感の取り方がうまいとも言えます。
伝えすぎないからこそ、受け手が自分の感情で補える。

たとえば、メッセージ性の強い投稿には気後れしてしまう人でも、無言の動画なら受け入れやすい。
強制されることがなく、「自分の感じ方でいい」と思える。

それは、発信者が“正解”を用意しすぎていないからこそ生まれる関係性。
Z世代にとって、**「この人は、ちゃんとこっちの自由を守ってくれる」**という感覚が、信頼のもとになるのです。

「しゃべらない」は戦略ではなく、空気を読む力

もちろん、全員が意図的に“無言”を選んでいるわけではありません。
でも、それを「ありのまま出していい」と思える空気が、Z世代の中には確かにあります。

声を出してアピールしなくてもいい。言葉にしなくても伝わることがある。
その“静けさの力”に気づいている人たちが、自然と支持されていく。

投稿に余白があることで、「この人の世界に入りたい」と思わせる。
しゃべらないこと自体が、その人の魅力になっているのです。

まとめ:Z世代が信頼するのは、「声の大きい人」じゃない

これまでSNSでは、「伝えること=しゃべること」だと思われがちでした。
でもZ世代は、伝える方法は声だけじゃないと知っています。

言葉がなくても、表情や動き、映像の静けさの中に、ちゃんと“人となり”がにじむ投稿。
それが今、共感され、信頼され、静かにバズを生んでいるのです。

しゃべらないことが弱みではなく、“自分らしさ”のひとつとして認められる時代
あなたの声がなくても、伝わるものがあるかもしれません。

ライター:レン・タカミ
字幕とUXの交差点を探る、映像設計オタク。元・動画制作会社のエディター。今は企業SNSの字幕設計や視聴データ解析に関わりながら、映像×テキストの“伝わり方”を研究中。ミリ秒単位の字幕表示タイミングや、縦型動画における視線誘導の仕組みに詳しい。機能美オタク気質。

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