「この感じ、なんかいい」ってどういうこと?
SNSを眺めていると、時々こう思うことはありませんか?
「この投稿、雑すぎない?」「ちゃんと作ってる感じじゃないのに、なんか好き…」
撮影の構図もバラバラ、フィルターも適当、キャプションは一言だけ。
それでも不思議と反応が多く、コメント欄には「こういうの好き」「逆に癒された」と共感の声が集まっている。
完璧じゃない。
でも、むしろその“雑さ”に惹かれてしまう。
そんな“愛され雑投稿”が、Z世代のSNSで確実に増えてきています。
その背景には、リアルさを求める空気感と、「SNS疲れ」へのカウンターのような価値観の変化があるのかもしれません。
“ちゃんとしてる感”が疲れる時代
ひと昔前までは、SNSの投稿には「統一感」「映え」「丁寧な編集」が必須条件とされてきました。
特にInstagramでは、フィードの世界観を保つことがフォロワー獲得の鍵だとされ、キャプションやレイアウトにも気を使うのが“常識”。
しかしZ世代は、その“ちゃんとしてるSNS”に対して、どこか「息苦しさ」を感じるようになってきました。
たとえば、1枚目の写真だけ盛って、2枚目以降は完全に気を抜いた顔。
ストーリーで誤字をそのまま載せて「まいっか」のスタンス。
ノイズ混じりの動画に、「撮れたからそのまま出す」という潔さ。
“丁寧じゃない”ことが、逆にリアルで、信頼できる。
Z世代は、整っていないからこそ信じられる投稿を、自然と求めているのです。
「狙ってないように見える」ことが、信頼につながる

面白いのは、そうした“雑さ”が、実は一種の表現技術になっているという点です。
すべてが完璧に整っている投稿は、どこか「演出感」や「作られた感」が透けて見える。
それに比べて、ちょっとしたズレや乱れがあると、「この人、本当のこと言ってそう」と感じることがあるんです。
つまり、「あえて盛らない」選択をすることで、“狙ってない風”を演出している。
しかも、それを受け取る側もそのニュアンスをちゃんと感じ取っている。
雑に見えるけれど、信頼できる。
そこに、“推せる”投稿が生まれるのです。
「雑=手抜き」じゃない
もちろん、すべての雑な投稿が良いわけではありません。
受け取る側が“愛せる雑さ”だと感じるには、投稿者の温度や感情が乗っている必要があります。
たとえば、「あーもうどうでもよくなった笑」と言って投げられた投稿に、ちゃんとその日の空気や気持ちがにじんでいると、受け手も「わかる〜」と反応したくなる。
逆に、ただ雑にしているだけ、投げやりすぎるだけでは「雑であること」自体が目的になってしまい、温度が感じられなくなる。
Z世代は、“雑っぽさ”のなかにも、その人らしさや感情のリアルを読み取っています。
つまり、見せ方は雑でも、中身はちゃんと伝わっている必要があるんです。
「親しみ」は、少しの“ゆるさ”から生まれる
人は完璧なものよりも、少し不完全なものに親しみを感じるといいます。
SNSの投稿もそれと同じ。
余白があるから、入り込める。ズレてるから、コメントできる。
たとえば、変なタイミングで切れている動画、妙にズレたBGMの選曲、テキストの語尾だけ平仮名になっているキャプション。
そのどれもが、“手を伸ばせる距離”を感じさせてくれる。
「この人、ちょっと抜けてるとこあるけど、そこが好き」
そんなふうに思える投稿があるだけで、SNSは急にあたたかくなるのです。
雑投稿は、フォロワーとの“ちょうどいい関係”をつくる

毎回完璧な投稿をしていると、フォロワーは「この人、遠い存在だな」と感じてしまうことがあります。
一方で、たまに雑だったり、気の抜けた投稿を挟んでくれると、「近い存在」として安心できる。
Z世代のSNSでは、“推せる距離感”をどうつくるかが鍵になっています。
雑さは、その距離感を縮めるための、ちょうどいい緩衝材のような存在。
投稿する側も、「毎回うまくやらなきゃ」と気負わずに済むし、受け手も「完璧じゃなくていい」と思える。
SNSがただの発信ツールから、共感と関係性の場へと変わっていくなかで、この“雑さの価値”は見逃せないものになっています。
まとめ:「雑でも、ちゃんと伝わる」ことが強さになる
SNSにおいて、「雑」はもはや手抜きではなく、リアルの証拠。
完璧じゃないからこそ伝わることがあり、丁寧に仕上げすぎないことで、かえって信頼が生まれる。
今、Z世代は「きれい」「おしゃれ」よりも、「ちょうどよく気が抜けてること」を大事にしています。
それは、自分にも他人にも無理を強いない、新しいSNSの使い方。
あなたの投稿が、ちょっと雑でも、それを見た誰かが「好きだな」って思ってくれるかもしれません。
完璧じゃない投稿こそ、誰かにとっての“安心”になる時代が、もう始まっているのです。
ライター:ミレイ・キタノ
Instagram運用の現場で“バズの空気”を肌で感じてきたマーケライター。加工に頼らない投稿設計や、リアルさが刺さるタイミングを見極めるのが得意。SNSの「映え」より「共感」を重視する潮流に注目し、フォロワーとの距離感をつくるコンテンツ設計を日々研究中。