“作りかけ”なのが逆にリアル?SNSに広がる“未完成投稿”の魅力

“作りかけ”なのが逆にリアル?SNSに広がる“未完成投稿”の魅力
“作りかけ”なのが逆にリアル?SNSに広がる“未完成投稿”の魅力
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完成してないのに、なぜか共感されてる

SNSを見ていると、ときどき目にする“未完成っぽい”投稿

テキストの途中で文が切れていたり、キャプションが「とりあえず投げとく」みたいなノリだったり。フィルターも中途半端で、加工が甘い画像もある。でも、そういう投稿に限って「いいね」やコメントが意外と多かったりする。

一見すると、ちゃんと仕上げてないように見える。だけどそれが逆に、「リアル」「親近感ある」と好意的に受け取られているのが今のSNSの空気です。

どうしてそんな“未完成な投稿”が好かれているのか?
そこには、Z世代の投稿観・距離感・共感スタイルの変化が見えてきます。

映えるより“らしい”が重視される時代へ

「とりあえず出してみた」

「まだまとまってないけど」


「このままでも、まあいっか」

こうした言葉に添えられた投稿には、整えられていないゆるさがあります。以前なら“雑な投稿”とされていたものが、今では“人間っぽくていい”という評価に変わってきました。

特にZ世代は、完成度よりも“自分らしさ”や“率直さ”を重視します。
整いすぎた投稿は、どこか嘘っぽく見えてしまう。逆に、ちょっと抜けてたり、明らかに作り途中だったりすると、「あ、この人、ちゃんと感情で動いてるな」って感じられるんです。

SNSの投稿に求められているのは、もはや「見せる作品」ではなく、「感情の断片を共有する場」。完成度の高さより、その人の今がにじんでいるかが重要なんです。

あえて“途中”を出すことが、表現になる

たとえば、メイクの途中の顔を「今日ここまでしかできなかった」と投稿する動画。
原稿の一文だけを載せて「ここからが書けない」と呟くストーリー。
完成前のイラストやデザイン案を「悩んでる」と言いながら投稿するツイート。

どれも“まだ途中”であることを隠さず、むしろそこに価値を見出している点が共通しています。
Z世代にとって、“途中”はマイナスではなく、むしろ“今、自分が動いている証拠”でもあるのです。

「完成してからじゃないと出しちゃいけない」という考え方は、今や古いルール。
未完成であっても、それが自分にとってリアルなら共有する価値がある──そんな感覚が広がっています。

受け手も“余白”を楽しんでいる

投稿が完璧すぎると、「これ以上コメントしようがない」と感じることもありますよね。
でも未完成な投稿には、“まだ何か続きがある気配”“自分の解釈を挟める余地”が残されています。

たとえば、「途中で切れてるキャプション=これは何を言いたかったんだろう?」と想像する。
「まだ作業途中の動画=完成したらどうなるんだろう?」と興味が湧く。

受け手側は、その“隙”に入り込むことで、より深く投稿者の感情や世界観を想像できるんです。
つまり、未完成な投稿は“余白のあるコンテンツ”として機能するわけです。

そしてこの「余白を一緒に味わえる感覚」こそ、Z世代に刺さる共感ポイントでもあります。

フィードはポートフォリオじゃない

かつては「プロフィールの整合性」や「統一された世界観」が重視されていました。
投稿ひとつひとつが“ブランドの一部”として、ちゃんと仕上がっている必要がある。そんな考え方が当たり前だった時代。

でも今は、フィードは自分の“心のログ”のような場所に変わってきています。

そのときどきの自分の状態や、途中の感情を記録していく。そこに美しさや整合性がなくてもいいし、むしろ“揺れてる感じ”こそが味になる。

SNSは完璧を見せる場所じゃなくて、“まだ途中の自分”を共有できる空間になっているんです。

まとめ:未完成=共感の入口

完成していない投稿には、“隙”がある。
その隙があるからこそ、受け手は入り込めるし、感情を投影できる。

「これまだ途中なんだけど…」という前提があることで、見る側も構えずに楽しめる。
投稿者の不完全さが、そのまま“親しみ”になって伝わる。

Z世代の間では、完璧に仕上げること=届くことではなく、不完全であること=繋がれることという価値観が広がっているのかもしれません。

あなたのカメラロールに眠っている、途中までしか撮ってない動画、書きかけのメモ、落書きのような写真。
それらは「まだ出すには早い」ものではなく、むしろ今出すからこそ“伝わる”かもしれないのです。

ライター:ユナ・ハセガワ
Z世代の“なんとなく好き”を深掘る、SNSカルチャー観察ライター。
投稿者の言葉づかいや間の取り方、目線や余白の使い方に注目しながら、「共感される理由」をていねいに拾い上げるのが得意。バズの構造だけでなく、そこに漂う“空気の正体”を言語化し、フォロワーとの距離感が変化する瞬間に強く興味を持つ。

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